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SS「たまにはこういうのも悪くない」

あけましておめでとうございます!

k弥生でございます!!

今年もよろひんにゅよろしくお願いします!!(k弥生の考えた新年のあいさつ)

2016年の始まり、平成27年のスタート、みなさまいかがお過ごしでしょうか!!


さてさて、年末はいろいろとありましたが(ええいろいろありました)、なにはトモアレ新年スタートでございます。


そんなわけで! 年明け早々一発SS書きました!

「お正月だよ! Reon!」

まさに特番感。オールキャスト、まではいかないものの、なかなか豪華な顔ぶれですw
整合性とか世界観とか○○喰らえですぅ。

しかしまあ、なんでそんなところを書くかな、と書き終えてから思ったりもしましたが自分が楽しかったので良しとします。反省しません。

それでは、どうぞ。





玄関のドアを開けると、外の冷気が吹き込んできて一気に気温が下がる。

ぶるるっ、と身震いをした明良は首元のマフラーを口元にまで引き上げた。

はー、すっかりと冷え込んでるなあ。

コートも厚手のものにして正解だな。
手袋は念のためにポケットに忍ばせてあるし。

財布、スマホ、鍵・・・忘れ物はなし。

「それじゃあ行ってきますよっと」

・・・戸締り確認オッケー、っと。

腕時計をちらり、見る。

デジタルの数字が「22:00」を表示している。
待ち合わせジャスト、の時間だ。
と、

「あーきーくーん♪」

呼ぶ声に振り向くとそこには、

「よっ、都子」

都子が満面の笑顔で明良に向かって両手を小さく振っていた。

明良も右手をひらひらと振りかえした。

都子は両手でぎゅっと握りこぶしを作ると、

「こんばんはです~!」

言いながらその握りこぶしを上下にぶんぶか振る。

「ごめんな、待たせたかな?」

「んーん、都子も今出てきたところですよっ」

おおっ? 
いつもは少しのんびりおっとりしてる都子がなんかテンション高いぞ?

「盛りあがってるねぇ」

「そりゃそーですよっ! 大晦日ですよ大晦日! 一年にいっぺんの年末年始ですよっ」

「そりゃまあ12月31日は年に一度しか来ないだろうよ」

「そりゃそーですよっ!! なに当たり前のこと言ってるんですかアキくんてばっ!!」

「そりゃ・・・まあいいや」

そういえば去年の大晦日も、都子はテンション高かったっけな。
あの時はテンションあがりすぎて甘酒で酔っ払っちゃったんだよな、都子のやつ。

「さあさあ行きますよ? まったくアキくんてばのんびり屋さんですね!」

都子は明良の手をぐっと握ると、ぐいぐい引っ張って歩き始めた。

・・・相変わらず都子の手は小さいし、すべすべだし、あったかいしで、急に握られるとドキッとするじゃないか。
けどもそんなことは微塵も表には出さずに、

「のんびり・・・って、それは都子に言われたくないぞ」

とツッコミを入れてみた。が、

「ふんふーん♪」

オイオイ、答えの代わりに鼻歌が返ってきたぞ。
聞こえないふりでごまかしたのか、それとも本当に聞いてないのか。
・・・後者だってことは言うまでもあるまい。

それだけ楽しみにしてたってことで。

そんな都子の反応に明良は、どこかむずかゆくもあり、無性に嬉しくもあった。





駅の改札口はすでに人で溢れかえっていた。

それらはほとんど新年の初詣客なのだろう。

彼――不動虎太朗もそんなうちの一人だった。

「さて、と。待ち合わせの時間はもう5分は過ぎているけれども」

見上げた駅の時計は待ち合わせの時間ある22時30分を5分以上過ぎていた。
手にある缶コーヒーはすでに冷めたくなっている。

「まったく・・・
『トラくん、今日は一年で一度しか訪れない歴史的瞬間だからね? 絶対に遅刻などしてはいけないよ?』
なんて言ったのはどこの誰だよ」

などとボヤいてみるが、

「ま・・・いっか」

にへら、と頬を緩ませた。

「待つのも男のシゴトとでも言いますか。それにセンパイのことだ、『主役は遅れて登場するものなのだよ!』とか言いそうだしな」

「うー、寒い・・・」

今夜は冷え込む、とニュースで見たので厚手のコートにマフラーまでは準備をした。
けれど、

「手袋も持って来れば良かったな・・・」

しかし後悔先に立たず。
一瞬、コンビニで買おうかとも考えたが、そうやって部屋に着々と増えていく手袋たちのことを思うと今回はちょっとやめにした。

あきらめて手をすり合わせたり息を吐きかけたりして団を取る。

「しかし本当に賑やかだなあ」

気分はお正月、皆の浮かれて賑やかで楽しい雰囲気になっていた。

と、そんな中、

「裕・也・の・バカーッ!!!」

「げふぅっ!? な、なにいきなりとび蹴りかましてるんだお前はーー!!」

「ゆ、ユウくんたいじょうぶ!?」

殺伐とした雰囲気の3人組がいた。

「・・・この年末に痴話喧嘩、かな」

やれやれと息を吐く虎太朗。と、その時だった。

「――待たせたな、少年」

この雑踏の中でもはっきり聞こえる、凛と響く声。
間違えるはずがない。この声の主は虎太朗の待ち人、鳳仙寺羽衣だ。

「センパイ遅いですよ――」

言いながら振り返る。
ちょっと頭でも小突いてやろうかな、なんて考えながら。

しかし、虎太朗の考えは実行されることはなかった。

なぜなら、

「遅れてすまなかった! ごめんね!!」

羽衣が虎太朗の胸に飛び込んできたからだった。

虎太朗は息を吸い込み――、ふっと表情を緩めると優しく息を吐いた。

「大丈夫ですよセンパイ。まだ来たばかりのところですから」

そう言うと、虎太朗は愛しい先輩の細い体を、ギュッと抱きしめた。





「このアタシがわざわざ帰ってきてやったってのにホントむかつくわね!」

「わざわざ・・・ってそれなら事前に連絡くらい寄越せっての。今日の今日でびっくりするだろうが!」

「まあまあ、ふたりとも・・・」

音羽は二人の間に入り、ふたりをなだめつつ小さくため息をついた。

「ふん!」

「けっ!」

互いに顔を逸らすとスタスタ歩き始める裕也と鈴萌。

その二人のあとを少し遅れて音羽がついていく。

どうしてこのふたりは顔をあわすと喧嘩ばかりしてるんだろう。

もうちょっとユウくんも大人になってあげればいいのに。
もうちょっと鈴萌ちゃんも素直になればいいのに。

そうは思うものの、そんなことを言おうものなら二人から集中攻撃をされそうだったので、音羽は言葉をため息とともにそっと吐いた。

せっかくの大晦日、新年の初詣なのになー。

もう今年も残り一時間なのになー。

鈴萌ちゃんが帰ってくるのは嬉しいし、全然ありなんだけど。

もうちょっとふたりとも仲良くしてくれるといいのにな。

それに――、

「――せっかくのデートだったのに、かな?」

「そうそう、せっかくのデートだったのに・・・」

「ふふ。その気持ちは痛いほどにわかるよ」

「わかっていただけますか・・・・・・って、えええっ!?」

思わず声を上げてのけぞる音羽。
そんな音羽の様子に、先を歩いていた二人が立ち止り、振り向いた。

「どうした音羽――?」

「なに変な声あげて――」

振り向いて一瞬驚きの表情を見せたが、すぐに相好を崩した。

果たしてそこにいたのは。

「――やあキミたち。今年もお世話になったね」

右の人差し指をピッと立て、いつもと変わらずミステリアスな笑みを湛えた――、

御崎静香だった。






「また天が廻るの――」

女子寮の屋上で漆黒の夜空を見上げる一人の少女。

風にはためく銀色の髪を、纏めようともせずそのままにしている。

真冬だというのにセーラー服の上に夜空と同じ色をした黒いマント姿、頭には大きな三角帽子といういでたちだ。

これで箒でも持っていれば完全に魔女のそれだったが、さすがに箒は手にしてはいなかった。

天を仰ぎ、両腕を広げ、目を閉じる。

まるで瞑想でもしていたかの様相だったが、不意に右目のみ半眼にすると、

「――エミリなの」

振り向きもせずに、その名を紡ぐ。

「フフッ、さすがだな、まおみ」

少女――天谷まおみの背後に、音もなく立っていたのはやけに胸元や太ももを強調した白いタイトスカートスーツ姿の上から、マントのように白い軍服のようなコートを羽織った妙齢の女性――玄蔵院瑛美里だった。

まおみは顔を下ろすと両目をすっと開く。

振り返りもせずに、言葉を紡ぐ。

「どうしたの? 今夜は天の廻る夜だよ?」

瑛美里はまおみの言葉に一瞬ピンとこない表情を見せたが、すぐに、

「天の廻る日? ああ、大晦日ってことか」

「そう、オオミソカ。寮のみんなもハツモウデに行ってるの」

「若いなよ。けれど、それが私の望んだ場所でもあるのだが」

白い息とともに言葉を吐き出す詠美里。
まおみはゆっくりと目を伏せる。

「――エミリはみんなみたいにハツモウデには行かないの?」

「ハハ、私は信心深くないし、そんなイベントごととは無縁の人間だよ」

笑う瑛美里に、ちらり、右目だけ半眼なるまおみ。

「デネブはちょっとさみしそうだったの」

「そこでどうしてデネ――いや、鉄心の名前が出る・・・」

「それは――エミリがエミリで、デネブがデネブだから、かな?」

「言ってる意味がわからん」

まおみは右手の人差し指をピンと立てて、肩ごしに背後にいる瑛美里にその指先をくるくると回して見せた。

「そんなの、魔法を使わなくたってふたりを見てたらわかるの」

「・・・ン、まあ、それはな、うん」

「『望んだ場所』だからこそ、ちゃんと『そんなイベントごと』に参加してもいいと思うの」

「――この私が、か?」

「そうなの」

「・・・・・・」

「まあ、あとはエミリ次第、なの」

「・・・ん。まあそれはそれとして、ゴホン」

口元を押さえてわざとらしい咳払いをする瑛美里。

こころなしか頬に朱がさしているようにも見える。が、

「――そう言うまおみはどうなるんだ?」

瑛美里からの問いに、

「え? まお?」

思わず振り向くまおみ。

そのまおみをじっとまっすぐ見据える瑛美里。

「お前は――独りで寂しくはないのか?」

「・・・エミリ?」

「ああっ、もう、だから、だ」

ワシワシと頭を掻く瑛美里。

「仮に私が――――と、その――――に行ったとして」

ごにょごにょとなぜか口ごもる瑛美里。そのせいでところどころ夜の風にかき消されてまおみまで届かない。

まおみはじっと瑛美里の顔を見つめた。

そんな視線に気づいて、瑛美里は気恥ずかしくなって視線を逸らした。

「そうしたら、お前は・・・独りになってしまうじゃないか」

「なるほどなの」

ポンと手を打つまおみ。

「それは気づかなかったの。ふむふむ、確かにまおってばトモダチいないコドクなショージョだから、エミリとデネブがラブラブしちゃったらひとりきりになっちゃうの!」

「ラブラ・・・なっ!?」

「けどいいのいいの。エミリもたまにはまおのことなんて忘れてデネブとラブラブらぶりんこするといいの!」

「ふ、ふざけるなっ! だ、誰が誰と、ら、ら、らぶ、ら・・・うがあああっ!!」

瞬時にまおみに詰め寄り彼女の胸倉を掴――んだはずだった。
しかし。

「あ、あれ?」

瑛美里が掴んだのは、まおみの残滓のみ。
まるで煙のようにその姿が掻き消えてしまった。

「――ふざけてなんてないの」

声は、瑛美里のすぐ背後で聞こえた。

「もう少し、瑛美里は素直になったらいいと思うの」

「な、なにを・・・」

「ふふ、ジンセイケイケンホウフなおねえさんからの、チューコク・な・の」

トン、と軽く背中を小突かれた。

眩暈にも似た感覚に、思わず目を閉じる瑛美里。

2、3歩たたらを踏み、振り返る。

しかし、そこにはすでにまおみの姿はなかった。

「消えた? ――いや、違う?」

まおみが消えたのではなかった。

先ほどまで屋上にいたはずの、瑛美里。
今、彼女が立っているのは――。

「学食・・・なるほど、強制転移の魔法でも使われたか、これは」

一瞬のうちに瑛美里は屋上から学食の前へと移動していた。
つまり、まおみの前から消えたのは、瑛美里の方だったのだ。





瑛美里は額に指をあてると、唸るように呟いた。

「つまり、まおみは私に「行け」と言っているのだな・・・まったく」

盛大なため息。

「なんでこの私が部下のデネブなんぞと・・・」

と、言いかけたところで、

「――あれ、学園長、どうしたんでさ、こんな時間に」

当のデネブ――こと、雁屋鉄心から声をかけられた。

「ひえあっ!?」

背後の声に思わず身をすくめる瑛美里。

「うわっ、こ、これは失礼しました!!」

予想以上の驚きを見せた瑛美里に、声をかけた鉄心の方が驚いてしまった。

「え、あ、ふぇ」

「・・・ど、どうされました?」

「あ・・・いや、ゴホンゴホン、なんでもない」

「そうですか? まあいいんですけどね」

いつもと明らかに違う反応の瑛美里に、怪訝そうな表情を見せる鉄心。

「ところで、ええと、学園長」

「なんだ」

「もうすぐ年越しですが、どうです、たまには初詣なんかに行かれてみるのは」

「なっ!!」

「まあ、自分らがそういったことに参加するのってなあ平和な証拠でさ。たまにはそういう気分に浸るのも良いんじゃないですかね?」

「そ、それは、デネブ、それはあれか、私と一緒に・・・で、で」

「え、自分と、ですか? 自分はこのあと年越しソバの準備が――」

初詣から帰ってきた学生たちのために、鉄心は毎年この時間も学食をオープンして、年越しソバをふるまっているのだ。
学食は基本的に鉄心ひとりで切り盛りしているので、鉄心がここを離れてしまうと学食に誰も残らない――。

それを瑛美里も知っている。だから、

「あ、いや、なんでもないんだ。私は自分の部屋に戻って酒でもいただくよ・・・」

肩を落として部屋に戻ろうとした、その時だった。

「おやかたぁ! もうこっちの準備はオッケーですぅ! あとはかれんひとりでなんとかしますよぉ!!」

学食の中からかれんがパタパタと姿を見せた。

今年は鉄心ひとりの学食ではなかったのだ。
そう、かれんがいたのだ。
鉄心から全てを学び、そして鉄心と並び立って学食を切り盛りする、かれんが。

キラキラと輝く笑顔をたたえ、かれんは二人に対して力強く言い放った。


「話は聞きましたですぅ! ここはかれんに任せて、ふたりで初詣、行ってきてくださいですぅ!」







神社の境内から、参道へ。
人の列が形成されていた。

みな、一様に年越しを待っている。

裕也たち4人も、同様に列に並んでその時を今か今かと待っていた。


「ふふふ、ところで相変わらず成瀬クンは女泣かせだね?」

言ってニヤリ、と笑う静香。

裕也は表情だけでなく体全体から倦怠感を滲ませながら、

「・・・別に俺が何したってわけじゃないと思うんですけど」

「そのヤレヤレ感にみんな参ってしまうのかな?」

「なんですかそのヤレヤレ感って」

「キミの、どこか達観した部分さ。言い換えれば『クール』ってところかな」

「まあ確かにバカ裕也はいつもヤレヤレ言っててつまんなそうだし」

と、鈴萌。

「そ、そんなことないよー? ユウくんはいっつも熱いハートの持ち主だよ?」

と、音羽。

そんなふたりを半眼で見やると、

「・・・ったく・・・や―――」

ため息を吐きかけて、そこでハッと裕也が固まった。

「おっ!?」

キラーン! と静香の目が輝く。

「今、こぼしかけたね? 生『ヤレヤレ』をこぼしかけたね!?」

「ぐぐ・・・そんなこと、ないですよ・・・」

ギリギリと歯ぎしりをする裕也。

「ったく、バカ也のその癖、直したほうがいいよ?」

「ゆ、ユウくんも疲れてるんだよ、ね、ね?」

鈴萌と音羽からのフォローに裕也は、

「ふたりともフォローになってねえよ。しかもなんだよ『バカ也』って。省略しすぎだろ」

やれやれとため息を吐いた。

「ふふ」

にやにやと笑う静香。

その表情を見て、裕也は盛大にため息をついた。

「せいぜい星にでも祈ってくれ。俺の悪い癖が治りますようにって」





「そろそろ時間だな!」

寄り添う羽衣が虎太朗を見上げた。
いつも以上にわくわくした表情の羽衣。

・・・ホントこの人、かわいいよな・・・。

「ぬ? 今、何か変なこと考えてなかったか?」

「いーえ、なにも」

幸せそうに微笑み返す。
羽衣はちょっと不服そうな顔をするが、虎太朗が羽衣を抱き寄せると、「ふむう」と呟き羽衣もまた虎太朗にぴったりと寄り添った。

待ち合わせの時に感じた寒さは、今はもうすっかりと忘れていた。

カウントダウンが近づき、周囲もざわつき始めた。

見れば、さっき駅で賑やかにしていた男女の集団も、少し離れたところで列に並んでいた。

「――だから、バカって言ってるでしょ!」

「はいはい、そろそろやめたまえ――」

相変わらずの賑わいっぷりだ。

むしろ微笑ましいレベルだな、と虎太朗は思った。

ふと腕の中の羽衣の様子をうかがうと、どうやらその集団が気になるようだった。

「どうかしましたか?」

「――あ、いや、なんでもない。ちょっと前に見かけた人に似ていたから」

「あの男がですか?」

「違うよ。何を藪から棒に言うかキミは!」

ちょっとからかったつもりが、盛大に反論されてしまう。
トン、と羽衣に小突かれて虎太朗がバランスを崩し――、

どんっ、と背後にいた女性にぶつかってしまった。

「はわっ!? だ、大丈夫ですか―?」

虎太朗よりも頭一つくらい背の高い女性だった。

年のころは同じくらいだろうか。

「あっ、すみません!」

「も、申し訳ない!」

虎太朗と羽衣、ふたりで口々に謝り、頭を下げて、すぐに離れた。

「いいんですよー」

長身の女性は笑顔でうなずいてくれたのでふたりはほっと胸をなでおろした。

「あーびっくりした」

ふぅ、と息を吐く虎太朗。

「・・・・・・」

無言でうつむく羽衣。

「ど、どうしました?」

「今の女性」

「は、はい」

「すごく――おっぱいでかかった」

「・・・は?」

「やっぱりトラくんもああいうのが好きなのか」

「えーと、ちょっと待ってください」

はぁぁぁぁ、と今日一番の盛大なため息を虎太朗は吐いた。
いつものやり取りだ。

胸の大きい女性に出会うと、いつも羽衣は同じ質問を投げかけてくる。

そして――虎太朗はいつも同じ答えを返す。

「そんなわけあるわけないですよ。神に誓って、星に誓って俺が好きなのは――」





「大丈夫か、都子」

都子にぶつかってきたカップルをジロリと睨む明良。
そんな剣呑な視線に気づき、都子が慌てて両手を振った。

「あっ、ハイ、都子、全然だいじょうぶですよー♪」

両手でVサイン。その都子の仕草に明良の表情がふっと和らいだ。

「まったく、もうすぐ除夜の鐘だからってみんな浮かれすぎだっての」

「・・・アキくん、ちょっと怒ってます?」

上目使いで明良を伺う都子。
その額をぴんと弾くと、

「そりゃそうだ。自分の彼女が突き飛ばされて怒らない彼氏はいないと思うぞ」

「・・・えへへ」

「なんだよ」

都子は明良の腕にギュッと抱きついた。

「ありがとうございます♪」

腕に当たる都子の双丘の感触にドギマギしつつもぐっと堪えて、明良はきっぱりと言った。

「当たり前だよ」

――しかし。

(あー、最高だよこの瞬間! どうかこのまま時が止まってくれないかなぁ!!)

冷静を装う明良だったが、腕に当たる暴力的なまでの弾力に頭がいっぱいなのであった。






そして――。

除夜の鐘が鳴り、

やがて――。

「あけましておめでとうございます!!」

誰かが。
誰もが、
みなが、
口々に、

新年を祝った。





遠くから聞こえてくる除夜の鐘の音。

屋上にひとり佇むまおみは、鐘の音を聞きながら天に向かって両手を突き上げた。

「――去らば旧き天の廻りよ。

――来たれ新しき天の廻りよ」

それはまるで祈りのように。

「――天の極北、ポラリスの名において命ずる――」

朗々と、詠うように。

「――新しき天の廻りに、新たな幸あれ――」




「見て、ユウくん!」



「な、流れ星だよトラくん!! 早く、星に願いを!!」



「わぁ~、すごいです、こんなに流れ星いっぱい見たの初めてですよ?」




かれんに促され、後押しされたふたりは近くの神社への夜道を並んで歩いていた。

「おっ」

ふと空を見上げた鉄心が、足を止めてびっくりしたような声を出した。

「どうしたデネブ! 敵襲かっ!?」

瑛美里も立ち止まると、用心深く周辺に気を配った。
鉄心はあわてて手を横に振ると、

「いや、そんなんじゃねえです、今、流れ星がですね」

「流れ星? 本当か!」

つられて瑛美里も夜空を見上げた。

すると、

「あ、流れ星――」

ひとつ、
またひとつ。

やがて、無数の星々が。
夜空を流れた。

「・・・流星群の季節じゃ、ないですよね?」

普段の流星群でも、ここまでくっきりと見えることは珍しい。

夜空全体を流れ星がキラキラと流れていく。

「そんなニュースは、なかったはずだ」

鉄心と瑛美里は、立ち止って流れる無数の星を眺めた。

そうしてしばらくふたりは並んで立ち尽くし――。

瑛美里はこんな自分が、こんなふたりがなんだかおかしくなって、笑みをこぼしていた。

それは学園長としては決して見せたことのない、まるで少女のような優しい微笑みだった。

そして学園の方を振り返ると、ニヤリといつもの笑みで口元を釣り上げた。

「なるほど、な」

言って、瑛美里は隣に立つ鉄心に半歩近づく。

鉄心はそれに気づいていないのか、穏やかな表情で流れ星を見ている。

さらに、もう一歩・・・。

鉄心はまだ気づかない。

そんな彼の腕を瑛美里は――、

「たまにはこういうのも悪くない、な」








「――悪くないでしょ? なの」


まおみは誰にともなくそう言うと、

「ふうっ、おしまい、なの」

ゆっくりと両手を下ろした。

うっすらと額には汗が滲み、息も上がり、頬は上気している。

あの流星群がまおみの仕業なのか、ただの偶然か。

それは誰にもわからない。

けれど、


「けれど――、

みんな喜んでくれてよかったの♪」


夜空に流れる無数の星々。
そうして、実に107つ目の流れ星が夜空に消えたとき。

まおみは満足そうにふわりと微笑んだ。



「あ はっぴーにゅーいやー なの♪」



同時に108つ目の流れ星が、

まおみの頭上でひと際輝く光の尾を引いた――。


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